事実が分かった瞬間から、周りの声が一斉に聞こえ始めます。「すぐ別れるべき」「子どものために我慢して」「慰謝料を取らないと損」。けれど、事実を知ることと、これからを決めることは、別の判断です。今日決めなくていいことを、今日決めないための整理をします。

最初の数日:決めなくていいことを決めない
- 体と睡眠を守る。眠れない・食べられない日が続くときは、判断を先に延ばして構いません。
- 子どもの生活を変えない。大人の話は、子どものいない場所で。
- SNSに書かない。怒りのままに書いたものが、あとで自分の立場を悪くすることがあります(やってはいけない浮気の確かめ方)。
- 知った日を記録する。不法行為にもとづく慰謝料の請求には、「損害と加害者を知った時から3年」という期限があるためです(民法724条)。
選択肢1:再構築(やり直す)

やり直すことは、負けでも我慢でもありません。事実を知ったうえで選ぶ、ひとつの結論です。再構築を選ぶ前に、次の3つを言葉にしておくと、あとで苦しくなりにくくなります。
- 相手との関係は終わったのか。「終わった」と言っているだけか、連絡手段まで整理したのか。
- 約束は具体的か。「もうしない」だけでなく、帰りが遅くなるときの連絡、お金の管理など、確かめられる形になっているか。
- 自分の線引きは何か。次に同じことがあったらどうするかを、自分の中で決めておく。
ふたりだけの話し合いが難しいときは、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)を使う方法があります。調停では双方から事情を聞き、夫婦関係が円満でなくなった原因や改善の方法について、解決案を示したり助言したりする形で進みます。離婚を迷っている場合にも利用でき、申立ての費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です(裁判所)。
選択肢2:別居する
距離を置いて考えたいとき、別居が選択肢になります。別居中でも、夫婦や未成熟の子の生活費(婚姻費用)の分担について話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることができます(申立ての費用は収入印紙1,200円分と郵便切手)。
一方で、別居の期間や経緯は、あとで「婚姻関係がいつ破綻したか」を考えるうえで争点になることがあります(判例で見る不貞行為の線引き)。別居を始める前に、法律の見通しを一度確認しておくと安心です。
選択肢3:離婚する
離婚には、話し合いで決める協議離婚のほか、家庭裁判所での調停や裁判といった手続があります。民法は、裁判で離婚を求めることができる場合のひとつとして「配偶者に不貞な行為があったとき」を挙げています(770条1項1号)。ただし同じ条文は、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できるとも定めています(770条2項)。
お金(財産分与・養育費・婚姻費用)、住まい、子どものことなど、決めることは多岐にわたります。ひとりで全部を抱えず、専門家の見通しを借りてください。
慰謝料について知っておきたい3つのこと
- 不貞行為による慰謝料は、不法行為(民法709条・710条)にもとづくものとして考えられています。
- 浮気相手に離婚そのものの慰謝料を請求することは、特段の事情がない限りできないと最高裁は判断しています(平成31年2月19日判決)。不貞行為による慰謝料とは区別されています。
- 婚姻関係がすでに破綻していた場合は、特段の事情がない限り、浮気相手は責任を負わないと判断されています(最高裁平成8年3月26日判決)。
金額や見通しは、個別の事情で大きく変わります。断定的な金額をうたう情報より、あなたの事情を聞いたうえでの見通しを優先してください。
相談先

- 法律・お金の見通し:法テラス・サポートダイヤル(0570-078374/平日9時〜21時、土曜9時〜17時)。問い合わせの内容に応じて、法制度や相談窓口の案内を受けられます。
- 調停の手続:各地の家庭裁判所の窓口、裁判所のウェブサイト。
- 暴力・脅しがある:DV相談ナビ(#8008)、DV相談+(0120-279-889)。
- 気持ちが追いつかない:厚生労働省「まもろうよ こころ」に公的な相談窓口がまとまっています。
判断の全体像は夫の浮気を疑ったら|次の一手の判断ガイドにまとめています。
この記事で分かること/分からないこと
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| 再構築・別居・離婚のそれぞれで整理しておくこと | どの選択があなたにとって正解か |
| 使える公的な手続(円満調停・婚姻費用の分担請求調停) | 調停でどんな結論になるか |
| 慰謝料の考え方と期限 | 慰謝料が認められるか、いくらになるか |
参考にした資料
- 夫婦関係調整調停(円満)(裁判所)出典
- 婚姻費用の分担請求調停(裁判所)出典
- 民法 709条・710条・724条・770条(e-Gov法令検索)出典
- 最高裁判所第三小法廷 平成8年3月26日判決(裁判所 裁判例検索)出典
- 最高裁判所第三小法廷 平成31年2月19日判決の解説(商事法務ポータル)出典
- 法テラス・サポートダイヤル(日本司法支援センター)出典
- DV相談について(内閣府男女共同参画局)出典
- まもろうよ こころ(厚生労働省)出典
当メディアの記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律相談ではありません。
まとめ
- 事実を知ることと、これからを決めることは別。今日決めなくていいことは決めない。
- 知った日は記録しておく(慰謝料の請求には期限がある)。
- 再構築を選ぶなら、関係の終わり方・約束の具体性・自分の線引きを言葉にする。円満調停という手続もある。
- 別居中の生活費は、婚姻費用の分担請求調停で決める方法がある。
- 金額や見通しは個別の事情で変わる。断定的な情報より、専門家の見通しを。


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